ページタイトル:中家のミズメ ロゴ:人里の巨木たち

画像:中家のミズメ_1

画像:中家のミズメ_2
名称 中家のミズメ (ちゅうかのみずめ)
名称の典拠 なし
樹種 ミズメ
樹高 27m(注1)
目通り幹囲 3.0m(注2)
推定樹齢 300年以上(注1)
所在地の地名 新潟県魚沼市中家(注3)
 〃 3次メッシュコード 5539−60−81
 〃 緯度・経度 北緯37度14分36秒
           東経139度00分42秒
天然記念物指定 なし
撮影年月日 2014年9月7日

注1)環境庁「日本の巨樹・巨木林 甲信越・北陸版」による
注2)地表面から1.3mの高さにおける幹囲を実測
注3)2004年11月1日、北魚沼郡の7町村が合併して魚沼市誕生。旧行政区は北魚沼郡広神村





 夏に筒形の可愛い花をつける蔓草にヘクソカズラがある。漢字では「屁糞葛」。屁(へ)だの糞(くそ)だのは、これが悪臭を放つためである。
 そうは言っても、非常に強烈な臭いだというわけでもない(なかにはこの臭いを感じない人もいるらしい)。こんな名ではあまりに可哀想だということで(?)、ヤイトバナという名もある。ヤイトはお灸のことで、白い花の真ん中だけが赤くなっているのを、火のついた艾(もぐさ)に見立てた名である。
 昭和32年(1957)初版刊行の保育社「原色日本植物図鑑」(私が所持しているのは昭和47年(1972)発行、改訂35刷)にはヘクソカズラの名で載っているが、平成元年(1989)に初版が出た平凡社「日本の野生植物」(私が所持しているのは新装版第2刷)ではヤイトバナとされているので、今はヤイトバナの方が標準和名なのだろう。
 ところで、樹木にも似たような名をもつ木がある。ヨグソミネバリという木である。漢字では「夜糞峰榛」と書く。峰榛の方は山地に自生する榛の木(ハンノキ)の仲間という意味だろうが、問題は夜糞である。
 図鑑等の説明を読むと、若い枝を折った時にサリチル酸メチルの臭いがするらしい。要するにサロメチールやサロンパスの臭いである。
 夜糞というからには、出所不明の強烈な悪臭を想像していたのだが、サロメチールならば、そう毛嫌いすることもなさそうだ。是非とも実際にその臭いを嗅いでみたいと思い、この木を訪ねた。
 目指す木は県道328号(三ツ又小出線)の北側山裾の樹林内に立っていた。しかし、自力で見つけることはできず、たまたま所在を尋ねた方がわざわざお仕事の手を休めて現場まで先導して下さらなかったら、失意のまま引き返すところだった。(この場を借りて、改めてご親切にお礼を申し上げたい)
 実はヨグソミネバリも、標準和名をミズメという。
 そのほかに、アズサという名で呼ばれることもある。梓弓(あずさゆみ)の梓である。戦さではなく祭祀等で用いられる弓のようだが、いずれにしろこの木の枝は弾力に富むのだろう。
 残念ながら、枝はみな手の届かない高所にあった。落ちていた枯枝や枯葉で試してみたが、サリチル酸メチルの臭いはしない。新鮮な枝でなければだめなようだ。
 香りのテイスティングは次の機会に譲ることにして、ヨグソミネバリ(ミズメ)には初見参である。
 初物を食べると75日長生きするそうだが、ミズメという樹種をはじめて知り、いくらか人生が豊かになった気持がして快かった。
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