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名称 秋目のアコウ (あきめのあこう)
名称の典拠 なし
樹種 アコウ
樹高 11m(注1)
目通り幹囲 9.3m(注1)
推定樹齢 不明
所在地の地名 鹿児島県南さつま市坊津町秋目(注2)
〃 3次メッシュコード 4730−01−26
〃 緯度・経度 北緯31度21分34.1秒
東経130度11分58.3秒
天然記念物指定 なし
撮影年月日 2009年7月28日.
注1)環境庁「日本の巨樹・巨木林 九州・沖縄版」による
注2)2005年11月7日、1市4町が合併して南さつま市誕生。旧行政区は川辺郡坊津町
秋目の地名を聞いても、あまり知る人がないと思われるが、唐の名僧鑑真(がんじん)を知らぬ人は少ないだろう。
鑑真は、かの玄宗皇帝が、手放すことを惜しんで渡日を許可しなかったにもかかわらず、戒律を伝えて欲しいという日本人の懇願に応えるため、5度の渡航失敗と両眼失明の艱難を乗り越えて約束を果たした傑僧である。十分な名望を手にした高齢の僧にしてなお、不可能にも近い困難な志を貫く、この意志の強さである。私のような凡人には、ただただ驚嘆することのほか何もできない。
その鑑真が初めて日本の土を踏んだ地が、ここ秋目浦である。(国道226号沿い、秋目浦を眼下に見る高台に、鑑真大和上上陸祈(記)念碑と、鑑真記念館がある)
現在の秋目港 |
鑑真記念館を過ぎて、国道226号を旧笠沙町(かささちょう)方面に向かうと、ちょうど秋目港のあたりの路傍に「秋目の大きなあこうの木」と書いた案内板が出ている。あとは、案内表示に従うだけ。
のほほんと歩いて行ったのだが、思わず足がすくんだ。凄まじい大アコウである。
根元から幾本もの支幹が立ち上がっているのだが、それぞれ、勝手な方向に伸びている。かと言って脈絡がないわけではなく、それらは、あちらこちらで連理を成している。一体、どこがどうなっているんだか。
根の勢いもすごい。あたり一面、根に覆われているといった感じだ。
写真を撮っていると、年輩のご婦人が二人歩いて来て、近くに腰をおろした。散歩の途中のようだ。
「すばらしいアコウですね」と声をかけると、「兄さんはどこから来たか」と尋ねられた。私ももう還暦なのだが、「兄さん」と言われて悪い気はしない。とにかく、そんな会話が不思議でない年齢のご婦人である。
「新潟県から来ました」と答えると、驚きの言葉のあと、アコウの自慢話が始まった。先を急ぐ旅でなし、楽しく聞かせていただいた。
アコウの隣は、浄土真宗本願寺派正法寺。かつては秋目簡易小学校として使われたこともあるようだ。(お婆さんたちが卒業生かどうか、聞きそびれてしまった)
アコウのそばに立つ手書きの案内板には、樹齢千年とある。仮にその通りだとしても、鑑真和上は目にすることができなかったことになる。(失明の件は別にしても、鑑真の来日は天平勝宝5年(753)12月20日)
ただし、5回目の渡航挑戦の際、鑑真の乗る船は南方に流され、海南島で1年ほど過ごしている。鑑真がアコウという木を知っている可能性は高い。
鑑真にこのアコウを見せ、感想を聞いてみたいところである。 |
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